「体幹」という言葉、スポーツやトレーニングに関心があるなら誰もが「知っている」「使ったことがある」のではないでしょうか?
数年前にイタリアや日本代表で活躍するプロサッカー選手がおこなっている様子が頻繁に取り上げられていたこともあってか、「体幹トレーニング」という言葉もすっかりおなじみかと思います。(流行ったものの常で、体幹XXトレーニングとか何でも体幹をつければ良いと考えていませんか?みたいな運動も目にしますね。)
そして「体幹トレーニング」と一般的に呼ばれる運動の中には、GlimSCパーソナルトレーニングでもおこなっている運動もあります。
でも現状の「体幹」の認識には疑問を感じることが少なくありません。
「体幹」に限定せず、全身を鍛えればよいのでは?
今回は体幹トレーニングが良い悪いではなく、「体幹を特別」扱いするおかしさを考えてみます。
「体幹」と言っても体のどの部分かというのも人によってまちまちかと思いますので、まずこの記事内での「体幹」が身体のどの部分を指すかを決めてから話を進めたいと思います。
「体幹」ってどの部分?
今回の話の中では多くの(良い悪いでなく)人が考えていると思われる部位にします。
お腹周り(胴体)=体幹
このように定義して話をすすめます。
体幹トレーニングってどのような方法でおこなうトレーニング?
一口に体幹トレーニングと言っても、人によりイメージする運動が違うかもしれません。
床にうつ伏せ、横向き、仰向け、四つん這い、不安定な器具の上での運動、その他体幹を鍛えるとされている目新しい器具などをさしているとして話をすすめます。(このトレーニングを一般に広げることとなったであろう有名なサッカー選手がよくやっているのを見かけるので。)
下の画像のような運動もその1つ。
そもそも「体幹」だけが特別大切な部位なのか?
「体幹」という言葉以下のように使われているのを見たり聞いたりしたことはありませんか?
「体幹がブレないからスイングが安定する」
「体幹が強いから当たり負けしない」
でも、床や地面の上でこれらの動作をおこなっている場合、地面と接している「足」、胴体を支えている「脚」が弱かったらどうなってしまうのでしょうか?
「脚ばっかり鍛えたってしょうがないから(脚はすでに鍛えていて)、体幹も鍛えよう」ってなったのかもしれません。そこだけを取り上げると話しとしては分かりますが、そもそもスポーツなどのためにおこなうトレーニング方法として適切ではない考え方をしている可能性があります。
比較されて敬遠される筋力トレーニングの方法と考えが同じでは?
体幹という身体の特定の部位だけをフォーカスして鍛える考えかたは、一般的にボディビルダーがしているとされる筋力トレーニングの方法、「今日は脚」「明日は胸」など部位に分けてトレーニングを行う考えかたと同じだということを知っていますか?
スポーツ選手や一般の方に適した筋力トレーニングを知らないのでは
部位別に分ける筋力トレーニングの方法が悪いわけではありませんが、別の考え方をする方法もあります。それは「押す・引く」など”動作”で種目を考えておこなう方法です。
体幹トレーニングが必要と考えている方の目的は何らかの動作の改善ですよね?
それなのに、部位別に分けておこなうボディビルダーがよく使う方法の筋力トレーニングと体幹トレーニングを比較しているのであれば、スポーツ選手などに向いている動作から考える筋力トレーニングを知らないと言っているようなものではないでしょうか。
そして、部位に分けておこなう筋力トレーニングの方法を否定して体幹トレーニングの利点を謳っておきながら、体幹という部位に拘ってトレーニングをしようという発想は矛盾していますよね?
(ボディビルダーの方は目的にあったトレーニングをしているので、そもそも体幹トレーニングという言葉の運動と比べること自体が間違いです)
なぜ脚と体幹を分けて考えるのでしょう?
「体幹トレーニング」に興味を持たれる多くの方が、なぜ部位別に鍛えるという考えをもつのでしょうか。どちらも一緒に鍛えられる運動があったら、そういった運動をおこなうことが効率的だと思いませんか?脚のトレーニングというと、スポーツクラブにあるようなマシンを使っての運動を想像される方もいるかもしれません。そうした方にはピンとこないかもしれませんが、そのようなマシンを使わない運動は、「体幹トレーニング」なんていう言葉ができる前からあります。
スクワットも「体幹」を鍛えている
スクワットって脚の運動ではないの?と思われるかもしれませんね。でも、適切なフォームでおこなうためには、脚はもちろん「体幹」と多くの方が呼んでいる部位も適切に使われている必要があります。ですから、スクワットも体幹を鍛えるトレーニングと呼ぶのは間違いでしょうか?(スクワットは脚の運動ではなく、全身運動と考えるほうがよいと思います。)
重いものを持ったらインナーマッスルが鍛えられないのでは?
「体幹トレーニング」を特別な運動のように話をする人の中に、重いウェイトを使ったら「インナーマッスルが~」なんて、なんの根拠もない話をされる方がいるようです。これも、筋力トレーニングの適切な方法を知らないことにまず問題があります。一般的に筋力トレーニングでは重りを使いますが、重いものを挙げるためにおこなっているのではありません。
そしてこうした考えが、意味のないものであると言える理由があります。
姿勢(フォーム)が同じなら使われる筋肉も同じ
持っている重りの重さの違いに関係なく、その姿勢を維持できていれば、そのために働いている筋肉郡に違いは生じません。ですから、体幹トレーニングのみを推奨する人がいう、重いものをもったから、インナーマッスルと呼ばれる筋肉が鍛えられないという現象は生じようがありません。つまり重りを持ってもフォームが変わらないような重量の設定が必要になります。
筋力トレーニングは安全で目的の部位を鍛えるために適切なフォームでおこなうことが大前提です。その上でトレーニングとその運動を呼ぶために必要な要素を満たす手段が重りです。自分の身体を重りと考える自重でできるようになったら、より強くなるためには負荷を増やす必要がありますが、その負荷が自分の身体以外のバーベルやダンベルなどを使用する重りです。
(余談ですが、だから一般的に運動時にあえてインナーマッスルを鍛えるなんていう発想は不要ですよ。)
問題のすり変えでは?
スクワットなどの運動を適切なフォームでおこなえていない、おこなえない。それを適切におこなうための努力や工夫をせずして、体幹トレーニングというような新しそうな運動だけで済まそうとするのはおかしくありませんか?
あくまでプラス1品な存在
身体を鍛えたいのならば、体幹だけではなく脚や腕とセットで動かすメインとなる運動をおこなう、おこなえるようにすることが前提だと考えます。その過程で必要に応じてこれらの運動も取り入れるという順番で考えるのが、理にかなっていませんか?特定の部位が弱い、競技の特性に合わせてより強化したいなどの理由があれば、体幹にかかわらず、その部位にフォーカスした運動をおこなえばよいと考えます。
沢山ある運動の1つ
今回の記事を読むと、「体幹トレーニング」と呼ばれている運動を価値のないもののように感じられた方もいるかもしれませんね。ですが、特別扱いをしていることが違うと読んでいただけたらと思います。
無理に主役にするから生じてしまうおかしさ
「体幹トレーニング」と呼ばれている運動を無理に主役として扱うため?に生じている問題があります。
トレーニングを受ける人が運動に慣れたら少しずつ強度を高める必要がありますが、適切ではないよくある例をとりあげてまとめたいと思います。
不安定な器具の上での運動は、その器具に乗ることが上手くなるだけ
運動の難度を上げるためか不安定な器具の上だったり、アクロバティックな体勢で運動したりするのをみかけます。その理由として、「不安定な場所でトレーニングすると、普段使われない筋肉が~。」のような説明をしているのを聞いたことがありますが、それに疑問をもったことがありませんか?
普段使われない筋肉ってそもそも何でしょうか?
トレーニングで筋肉を鍛えるというなら、目的とする動きとその動きのための筋肉があるはずですよね。狙ったところを効率よく鍛えることができるのがトレーニングのメリットです。そのためには同じ動作を正確におこないやすい方が良いですよね?
それならば、不安定なところより床など安定した場所の上のほうが安全で確実だと考えられませんか?
(重りを使ったトレーニングにも、フリーウェイトと呼ばれるバーベルやダンベルのように、重りの軌道も全て自分でコントロールする必要がある運動とマシンと呼ばれる軌道は器具まかせとありますが、体幹トレーニングという人にはフリーウェイトが前提です)
不安定な場所で運動をおこなう効果があるとしたら、 バランスボールの上ならバランスボール、ディスクならディスクなど、特定の不安定な場所に慣れることです。それは意味のあることではないのではありませんか?
スポーツをされている方がバランスを向上させたいと考えるなら、そのスポーツの練習をするのが1番です。
バランスを取るにも筋力が必要
バランスを鍛えたいと考える人が忘れてはいけないのは、バランスをとって姿勢を保つには力の大小を問わずなんらかの力は必要だから筋力は無視できないことです。動かなくても常に重力を受けていますし、動けば止まったり、加速するたびに体重以上の力が身体に加わるのですから。(力があればOKといっているわけではありません。)
この記事より、短い記事を書いたのでよろしければこちらも読んでみてください。
関連記事:体幹トレーニングという運動もやってますが、宣伝しない理由
まとめ
最後に多くの人が関心を持ち、またそれを専門とするスタジオなどがある理由を推測してみました。
- 器具も使わないか簡単なモノが多く、どこでもおこないやすい
- 重りなどをあまり使わないので、初めての方や女性もはいりやすい
- 有名なスポーツ選手もやっていているので男性も興味を持つきっかけがある
- けっこうキツク感じるので、やった感がある
- 上記の理由は指導する側もある意味でラク
これらが、人気の秘密かもしれません。
上に書いたような方の運動をはじめるきっかけとしては悪いとは思いません。
スポーツ選手のトレーニングは、興味を引きそうなところしか紹介されていない=それだけをおこなっているわけではないかも?という視点でみられたほうがよいかもしれませんね。
パーソナルトレーナーの立場からみると
本当にトレーニングを頑張って少しでも向上したいと努力されている方のサポートで、体幹トレーニングを特別な運動とするのは考えられません。トレーニングを受けられる方が望まれた場合でも、その方に必要な運動を提案させていただきます。必要であれば、他の運動と区別をせずに、プログラムの中に入れます。(特別なものではないので、GlimSCパーソナルトレーニングでは特に売りにすることはありません。
名古屋市昭和区・瑞穂区桜山パーソナルトレーニングスタジオGlimSC